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  1. 本に関すること

読了 『麻布ハレー』 松久 淳, 田中 渉 (著)

Book Review

書籍情報

作品名:麻布ハレー
著者:松久 淳, 田中 渉 (著)
単行本: 223ページ
出版社: 誠文堂新光社 (2017/3/1)

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恋愛ものと呼ぶには、もっと深いところで寄り添う幻想文学

境界のあいまいさが幻想的な物語を作り上げている

主人公に限らず、物語に登場する人々(少年達や文学者(兼官僚)、天文学者たち)は殆どモデルがいらっしゃいますね。とりわけ文学者たちのモデルには、特別に文学が好きでなくても気が付く人が多いのではないでしょうか。

私も全員に気が付けているかは分かりませんが、読み始めてすぐにぴんときました。その中で主人公である國善のモデルとなった文学者は、ちょっとだけ難しいかもしれません。

さて、この物語はモデルとなっている実在の人物達の経歴や名前を少しずつ混ぜて、そこにさらに新しい物語を加えています。

分かりやすく言うと、実在に架空を織り交ぜた世界が舞台です。そしてそこで人々が動き出し、話が進んでいきます。この物語は、事実と虚構のバランスが上手く釣り合っているのでそこにまるで違和感がありません。

このほんのわずかに違った世界で紡がれる物語は、現実と物語の境界がどこかあいまいで、

『こんなことあるかもしれないなぁ』

なんて、すとんと納得させられてしまうような気さえします。

実際のエピソードを知っていれば知っているほど、夢見心地のように少し不思議な世界に深く深くもぐり込んでしまうのではないでしょうか。

まあるいくちあたりの飲み心地

 

個人的に物語での二人の結末というかその関係を「恋に落ちている」と表現するのはちょっとすっきりしないなと思いました。

國善と晴海の関係は、恋というにはなめらかすぎるような気がします。
では何なのか、と問われるとそれはそれで答えに窮してしまいます。それでも上っ面だけの薄っぺらなものでない関係は伝わってくるので、これは一体どう咀嚼するべきものなのかともやもやを抱えました。

再度読み返してみて、二人の関係にそれらしい言葉を付けるならソウルメイトといった感じが一番しっくりとくるかなと感じます。
「かげがえのない」存在って、その人にとって完全だと感じられる人(代わりがきかない人)であり、それは必ずしも異性ではないし、またそこに激しい感情が伴う訳ではないと思います。

この二人の場合(1910年での出会い)は、たまたま異性として出会いましたし、國善は明らかに晴海を意識して行動している訳ですから「恋」というカテゴライズで間違いないのでしょうが、それよりもずっと奥底の深いところで繋がっている「魂の伴侶」という方が私は素敵だなと感じます。

また幾年幾年も巡り会いを繰り返しているからこそ、もはやごうごうと燃え上がるような関係から角が取れてまろみある関係へ円熟しているのだと捉え方をするならば、

「星が綺麗ですね」

それはどこまでもやわらかで分かる人にしか分からない秘密の合言葉となって、なんとも味わい深いなぁなんて思わずにはいられません。

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